2015年6月1日、2日
福島第一原発視察レポート
1日双葉郡川内村の皆さん
2日南相馬市の皆さん
15日いわき市の皆さん
と一緒に福島第一原発を視察しました。
1.視察模様(写真をクリックすると拡大表示されます)
視察の工程はおよそ5時間ほどに渡ります。
13時~14時までJヴィレッジにて廃炉への取り組み概要説明
14時~14時40分 福島第一原発への移動
14時40分~16時10分ごろ 福島第一原発内視察
16時10分過ぎ~17時20分 福島第一原発からJヴィレッジへの移動(帰宅渋滞)
17時20分~18時過ぎまで 視察の振り返りと質疑応答
メディアからの情報だけでは得ることが出来なかった現状の取り組みを皆さん得ることができました。
川内村の皆様(1日)
南相馬市の皆様
視察では第一原発に向かう前に、Jヴィレッジ本館(福島県楢葉町)にて事前講習を受けます。現在の廃炉の取組について、まずは資料とビデオで説明を受けます。
ビデオは事故当時と現在を比較した内容でした。
使われる資料をページ末に掲載しております。(クリックすると拡大します)
その後、作業員の方と同じように通勤バスに乗り換えて福島第一原発まで向かいます。
福島第一原発は大熊町にあるので、道すがら原発事故避難区域を通ります。
写真は避難区域の富岡町、大熊町の様子です。
帰還困難区域内は基本、除染は行われませんが、復興拠点等を作る場合、生活道路についてはその限りではありません。
写真の雑草が生い茂る風景は元田園地帯です。震災から5年目を迎えた農地の状況です。
福島第一原子力発電所構内模様
2.構内改善状況を表す、視察者防護装備
視察者の現在の防護装備です。
これはバス車内から視察する場合においてです。
バスを降りて作業場所を見る場合は防護服、前面または半面マスクをします。
今回視察では、サージカルマスク、綿手袋、足カバーをしました。
発電所構内環境は事故当時に比べれば、劇的に改善しています。
3. 構内で使われる線量計について
視察者も作業員の方と同じ線量計を使います。
ガンマ線、ベータ線を測ります。
約1時間10分の視察で浴びた線量は0.01ミリシーベルト、マイクロ換算で10マイクロシーベルトになりました。
立ち入ることも危険な事故当時に比べ、視察が出来る環境にまで現場は改善されています。
ちなみに、線量計には設定値を任意に定められ、設定値に対して、1/5毎にアラームが鳴るようになっています。
また、放射線を浴びる区域(管理区域)内作業は最大10時間までと決められています。こちらは9時30分で現場は管理し、余裕を持って退出を促すようになっています。案内では現場作業は4時間程度だと伺いました。
4. 大型休憩所
大型休憩所が正式に完成とおひろめされました。
作業員の方の利便性を優先し、入退域管理施設と密閉廊下で繋がっています。9階建ての建物です。
ようやく温かい食事が食べられ、またゆっくりと休むことが出来ます。
大熊町に作られた給食センターから、3000食が届けられます。
建屋内は非管理区域、放射能汚染がない区域です。
あれだけの事故があった場所にゆっくりと安全に休める場所が出来上がりました
「ご飯が食べれる」といったことだけではなく、現場改善に大きな役目を果たします。それは作業員同士がコミュニケーションを取れるということ。
これまで、全面マスクをした状態での意思疎通は難しく、またゆっくりと話合える環境が不満足でした。現場トラブルもこれで軽減されることと思います。
5.構内汚染水タンク
1枚目は以前汚染水漏れで取り上げられたボルト締め型タンクです。
こちらは現在作られていません。タンク群の周りには堰が設けられ、その上部には雨水を防ぐ屋根が作られています。また堰の中に溜まる雨水については排水設備が設けられています。
2枚目は現在作られ続けている、溶接型タンク、構内で作るだけでなく、遠い横浜でも作られています。(三菱重工製)海上輸送されています。
増え続ける汚染水は現在約62万トン、それに対して現在の余裕度は20万トンほど、さらに20万トンの余裕度を目指して建設中でした。
5月27日には構内の汚染水タンクの全量が、トリチウムだけとする浄化処理が終わっています。
これまでの高レベル放射性廃液を内包し続けてきた状態リスクから、大きくリスクの下がった状態での保管に変わりました。
増え続ける汚染水という課題の中で、その保管管理が向上しているのは安心要素の一つです。
今後、このトリチウムを含む汚染水の処理について、どうするかが課題です。
現在はまだ、確定していません。
情報として、ロシア、アメリカ、カナダといった諸外国の研究機関がトリチウムの処理について技術協力および開発に乗り出しているそうです。
汚染水タンクは大小合わせて約1000基構内にあります。
構内の樹木は伐採され、2日に1基のペースで建設されています。
現在作られているタンクの大きさは1基1000トンまたは1200トン。
1F構内面積は約350万㎡、巨大な敷地と言え有限です。
廃炉の取組は数十年レベル、構内に保管が効くうちに処理方法が確立されることを望みます。
管理は確立されている、ただし減らす目途はまだ立っていないところです。
6.4号機原子炉建屋
2014年12月22日に使用済み燃料プールに保管されていた燃料の移送が全数終わりました。
どこへ移動したかというと4号機西側にある共用プール建屋という場所です。(資料13ページ参照)
水素爆発で壊れた建屋内に保管していたのものが、復旧の終わった共用プールに移送されたことは、安全性と管理が飛躍的にあがったと言えます。
4号機はこれで核燃料がない状態になりました。
4号機については安心できる状態と言えます。
役目を終えた、写真に写る燃料取出しのために作られた建屋
残念ながら、3号機側への転用は出来ないそうです。(2枚目の写真)
3号機については、タイプは違いますが同じように燃料取出しのための建屋が建設されることになります。
使われている鉄骨は東京タワーとほぼ同量、つまりそれだけの放射性廃棄物が増えたともいえます。
例えば、表面汚染を除染し再利用するといったことも、今後検討されればと思いました。
そのためには、放射性物質に対する理解が進まないと無理だなとも。
改めて、無事作業を終えてくださった現場関係者の方々に感謝と敬意を抱きました。
7.1号機原子炉建屋上部
写真で見える白い建物が現在の1号機の外見です。
5月15日から1号機のカバー取り外しが始まりました。
かなり慎重に作業されているのが分かります。外観上の変化は見てとれません。
飛散防止剤を散布しながら、内部状況の確認を行っている段階です。
隣にある青い建物が2号機
外観に変化がないのは、2号機はブローアウトパネルというものが開き、水素が建屋外へ放出されたため、水素爆発は免れたからです。
写真右上に見える、超大型クレーン
こちらを遠隔操作(免震重要棟から、カメラを見ながら)しています。
これは高線量故に人力での作業が困難だからです。
これからは瓦礫の撤去も深重な作業で、遅々としたものになります。
人が近づけない作業現場がある。大変な課題が詰まっています。
放射性物質の飛散管理に対して、飛散防止剤の散布やダストモニタによる監視をしています。
こうした情報が住民の方にも、きちんと伝わり、そして現場の方は安全に作業に臨んで欲しいと思いました。
8.「現場で設置されているソーラー式線量モニター」
こちらの写真は多核種除去装置建屋前(ALPS建屋)前に設置されたモニターです。
数値は3.1マイクロシーベルト毎時(1時間当たり3.1マイクロ)です。
これでも事故当時に比べれば、劇的に現場の線量は下がっています。
震災前の原子力現場では、最少の線量区域が10マイクロシーベルト毎時でしたから、放射線従事者が働く環境としては問題のない数値になっています。
モニターが設置されたのは、働く方々に今の線量を伝えるためです。
こうしたモニターの設置が各所で進んでいます。これも労働環境の改善と言えます。
各作業場所に設置されたモニターの指示は免震重要棟で誰もが見ることが出来ます。
9.発電所構内の除染方法
4号機西側ののり面(斜面)の状況です。
通常の避難区域の除染と違うのは、土、草を除いた後にモルタルで舗装するところです。斜面の吹付ですのでモルタルですが、構内のいたるところでアスファルト舗装もされています。
視察ルートの中で一番線量が高いのはこののり面で、当日は35マイクロシーベルト毎時でした。2月の視察では120マイクロシーベルト毎時だったので、未だ高い数値ですがかなりの効果が出ています。
こちらの作業はフェーシングと呼ばれ、線量低減だけでなく、雨水の地下への浸透も防ぐ役目があります。
汚染水の増え続ける要因は地下水の流入です。
構内のフェーシングが進めば、それだけ雨水分が減ります。
労働環境改善だけでなく、汚染水対策としても有効な取組が進められています。
150万㎡の面積で進んでいます。
今年度内には、1~4号機周り以外は5マイクロシーベルト毎時を達成するよう除染が進んでいます。現在70%ほどが完了しているそうです。
10.「凍土遮水壁」
写真中央に走るパイプが凍土遮水壁です。左に見えるのが4号機です。
アップの画像を見ると、太いパイプから下にパイプが伸び、縦に打ち込まれた配管に入っているのが見えます。
これが実際の凍土壁の設備です。
壁を作っていると誤解している方も多いと思います。
1m間隔ごとに地下30mまで打ち込まれています。
今年の4月から試験運転が始まりました。
全長は1500m、1500本の配管が1~4号機の周りに打ち込まれることになります。
中には、-30°の冷媒が入っています。
仕組みとしては、1m間隔で打ち込まれた冷却配管でその間の土の凍結を行う。
この凍土壁の設備は規模は違いますが、地下鉄用作業で実際に使われているものです。
ただ1500mという規模での凍結は前代未聞の大プロジェクトです。
ほぼ完成、現在はゆっくりと山側から凍らしているということ。
失敗が報じられているのは、海側の凍土壁。
理由は海側の地下はトレンチと呼ばれる空間に汚染水があり、土ではなく水を凍らさないといけないから。
こちらに対しては、そしてタービン建屋側の止水を行い、トレンチ内の水をくみ上げる作業が並行して進んでいるそうです。
状況に対応しながら現場が進んでいくこと、これを知らないと安易に意味のない取組と言ってしまう。
現場はトライ&エラーを繰り返す状況で前には進んでいるなと感じます。
凍土壁が完成すれば、汚染水の増加を大幅に減らせます。
2.2015年6月時点での福島第一原子力発電所の取り組み状況